2026年3月31日
江南の絵師・柳生は、死してなお名を求め彷徨う。妖しき楼で出会ったのは、同じく名に囚われた亡霊たち。幻と真実の果てに映るのは、自らの骸と尽きぬ執念。生死を越えてなお、人はなぜ名を追い続けるのかを描く怪異譚。監督:FeiGe
江南の絵師・柳生は、筆力きわめて優れ、生涯を通じて宮廷画院に入ること、そして名を『名画譜』に連ねることを念願としていたが、その志を遂げられぬまま鬱々として世を去った。だがその魂は自らの死を知らず、なおも画稿を携えて江湖をさまよい続けていた。 ある雨の夜、彼は深山の「聴雨楼」に宿を借りる。楼主の蘇員外は彼と夜通し画を論じ、その筆墨を「まさに呉道子に迫り、千古の画譜に入るべきものだ」と称えた。だが、ふと硯が倒れ、墨が白壁を流れ覆うと、華やかな楼閣はたちまち崩れ去り、壁の内に累々たる白骨が露わとなる――蘇家一門はすべて百年を経た亡霊であった。 山門の外では、口のきけぬ僧が柳生を引き止め、引き返させる。聴雨楼はすでに荒れ果てた古い墓と化していた。地面の水たまりに映っていたのは、柳生自身の枯れた白骨であった。 しかし彼はそれを見ても、生死に驚くことはなかった。ただ文字なき墓碑を抱いて慟哭する。その嘆きは「画は画譜に載らず、名は後世に伝わらぬ」という一念にほかならなかった。やがて無言の僧が碑を叩くと、碑銘が浮かび上がる。蘇氏一門はもと宮廷の画師であったが、文禍によって名を削られ、籍を奪われた。死後百年にわたり幻境を設け、他者の才を借りて再び画譜に名を連ねようとしていたのである。 新旧二つの亡霊は、一つの塚に囚われ、生死を越えてなお「名を求める」という二文字から逃れることができなかった。